当時は解明されていなかった化学現象、
抗えない自然の脅威、
知られざる動植物の生態、
目視では見えずとも確実に何か”いる”と思わせる暗闇…。
そういう、怖くてよくわからん未知に対して、古来より日本人は「鬼」だの「神」だの「妖怪」だのと名付けて仲良くやってきました。知らんものなのに律儀にいちいち名前を付けるっていうセンスがもう日本人ですよね。私ィ〜その国固有の感性みたいなの調べるのすっごく好きなんですよねェ〜日本固有の月の名前とか雨の名前とか色の名前とかもめっちゃ惹かれません?? 風流じゃんね〜!! そういうノリで今回は、テーマ「イーハトーブとカッパ」のカッパのほう、岩手旅行後編です。前編はコチラ。
第2位:遠野の妖怪と日本人の感性
遠野市立博物館に行ってきました。
図書館の上にあります。
館内は接写しなければ撮影も概ねOKとのことだったのですが、閲覧するのに興奮していて撮影を普通に忘れました!! したがって写真はナシです!! 博物館の向かいにある神社兼公園がとても立派そうでそそりましたが階段が長すぎて攻略は断念しました!! 時間と体力に余裕のある方はぜひこちらも!!
『遠野物語』を知らずして遠野の魅力は語れない
遠野という土地は、明治43年、柳田國男という人物が発表した『遠野物語』なる民話集によって、妖怪伝説を色濃く残す土地として有名になりました。『遠野物語』とは、遠野出身の佐々木喜善という小説家から聞き集めた小話集で、その土地の人々の暮らしぶりや慣習、価値観なんかがつぶさに読み取れる、日本の民俗学の先駆けと言われるような名著なのですが、ぶっちゃけ、けっこうどうでもいいことばっかり書いてあります。
三人の女神が「いちばん素敵な夢を見た者にこの山をあげるね」と言われていちばんいい山を三女がもらったとか、
どこそこの山道に赤顔の大男が熟睡してびっくりしたとか、
嫉妬深い山男に攫われないようにキュウリを植えない地域があるとか、
カッパの顔は赤いとか、、、
ふぅ〜ん…ってかんじですよね…
でもさ、たしかに誰かの妄想だとか見間違えだとかの可能性も否定できないけどさ、そういう、わりとどうでもいいレベルでの民話がこう何百個も言い伝えられてるのって、不思議じゃないですか? 私の実家近くを流れる目久尻川はその昔、川に近づいた馬がカッパによって目をほじくり取られたから〈めくじり川〉と目づけられたとかいう逸話が残っていて、川辺には雰囲気程度にカッパの銅像もあったりしますけど、まあそのくらいしか聞いたことないもんね逸話。っていうか海老名市民でもこの逸話を知ってる人少ないんじゃないかって思うし。
「数百個のちょっぴり不思議な小話が伝承される土地」ってのは、つまりそこに何かが絶対にあるんですよ〜!
そうそう、座敷童子の存在って全国各地で噂されてますけど、目撃情報は岩手県がその9割ほどをシェアしてるらしいですよ。(9割はうろ覚えですけど…博物館にあった書籍にそんな感じで書いてありました、たしか)
あと、博物館には遠野の精巧なジオラマが設置されていたのですが、山を切り開き畑を耕す人々を見下ろす天狗や、馬を引き水を運ぶ人々を眺めるカッパがいたりと、妖怪が普通に共存していましたし。かわいい。世間のファンタジーは遠野の現実。
ちなみに、妖怪といえば水木しげるですが、彼もこの遠野物語から大いにアイディアを得たとかなんとか。そして、遠野物語発刊100周年を記念して水木しげるが描き上げた『水木しげるの遠野物語』は現在、その一部がアニメーションになってここ遠野市立博物館で視聴できるんだな〜!!!
妖怪はどこから出てくるのか?
で、そんな遠野市立博物館で見かけて最高に気になっていたら夫くんがAmazonで取り寄せてくれたっていうなごみエピソードを持つ『大人のための妖怪と鬼の昔ばなし』という本に最高に興味深いことが書いてあったんですけれど、
鬼だの神だの妖怪だのという輩は大抵、以下のような場所である。
・山、川、海などの、いつも暮らしている生活区域から外れたところ
・逢魔が時、丑三つ時など、真昼間より夜更けや夜明け前
・晴天時より悪天候の日
・生死が関わるとき。生まれた赤ん坊が異常に小さいとか異常に成長が速いとか、死んだはずの人間が姿を変えて戻ってきたとか。蛇の脱皮も生死のシンボル
・門、扉、橋の向こう
・現代で言えば、トイレの個室とか、長いトンネルとか、暗くて閉塞感のある場所
つまり、対象がどんな概念であっても、自分の日常とそれには境目があると感じたとき、それは人間にとって異界であり、鬼が生まれ出てくる場所なのである。
的なことが書いてあって、なるほどーーーっつまり異界は認識次第でそこらじゅうにあるし鬼もそこらじゅうに潜んでいるわけで、なんでもないはずのモノにちょっとした違和感を抱いてしまったその心にすでに鬼は巣食っている、鬼は常に私の心の中にいるということですねーーーっ!!!!!!!!
ということです。恐山ル・ヴォワールです。
ついでに、昔ばなしというのはバージョン違いが多々あるものですが、これの原因、単に「時代背景の違い」「土地柄の違い」くらいだと思っていましたが、本書によると「ウケるストーリーで語らないと聞き手が盛り上がってくれないから、語り部がその場の雰囲気でわざと盛ったのがそのまま伝わった」というのも大きいそうで、人間ってかわいいなと思いました。そんなもんだよね!
異界の者の存在を真面目に学びたいなら行くべし
本当は遠野市街を実地調査して、他にもある記念館とかにも行きたかったし、語り部のおばあちゃんの話も聴きたかったし、カッパもこの手で捕獲する予定だったのですが、時間不足で辿り着けませんでした。実に残念です。
異界の者について知ることは、私たち日本人の心のルーツを探る旅だなと思いましたので、鎌倉程度で外国人観光客にもみくちゃにされながら「古き良きニッポン最高ーっ!」とか言っちゃうくらいだったら遠野に行って妖怪の気配をほんのり感じて心身ともに涼しくなるのがオススメです! 鎌倉は夫氏の母校があります!